今回の依頼は自家水道設備のメンテナンスです。
朝一番でお客様宅に出入りの電気工事業者さんから連絡が入り、ポンプが壊れてしまって地下水を汲み上げなくなってしまったようなので対応に当たって欲しいと連絡がありました。
その日の予定を変更させて直ぐに現地へ向かうことにしました。
7年前に当店で入れ替えたポンプになります。
壊れるには少し早いと思いつつも、絶縁も落ちていて過電流でもありましたのでモーターが過負荷状態になっているようでした。
レッカーを手配して午後からポンプを引き上げてみる事にしました。
ガラガラと異音を出しており通電させるとモーター部が触れない程の熱を発します。
モーターが焼き付きを起こしているようです。
お客様からお話を伺うと井戸水がたまに濁る時がある様です。
井戸は当店で鑿掘したものではないので詳細なデータが無く、お家の方の記憶では50年以上経過しているとのお話でした。
井戸ケーシングに鉄管が使用されているので、そろそろ鉄管の寿命を迎えそうです。
鉄管が腐食して穴が開いてしまうと、そこから地層が崩落してしまい地下水に濁りを発生させてしまいます。
そうなると新たに水中ポンプを入れ直したとしても、濁り水を汲み上げることで今回の様に直ぐに故障してしまう恐れがあります。
何れにしても鉄管井戸は永久的なものではなく必ず壊れてしまう運命を迎えるものですので、上手くいくかは判りませんが…の一言を添えて井戸を延命させるご提案も一緒にさせていただきました。
現在の鉄管ケーシングの中へビニル管ケーシングを挿入する二重ケーシングの施工ですが、現在の井戸径より細くしてしまうので極端に揚水量を減らしてしまう心配がありますが、何も対策しなければ井戸が壊れるのをただ待つだけで、壊れた後は井戸の使用を辞めるか、場所を変えて新たに掘り直しを検討することになります。
お客様のご了承を得てチャレンジさせて頂くことになりました。
古い井戸ケーシングと新しい井戸ケーシングとの隙間は僅かです。
前回の入れ替えでは揚水管は新しくしたのですが井戸蓋は再利用していて、腐食が進行していましたのでこちらも更新する事にしました。
ステンレスポンプと鉄管揚水管の接続には異種金属接触の電位差によるガルバニック腐食が発生してしまうので絶縁継手を用いていました。
こちらにも少なからず腐食の兆候が見られましたので大事を取って更新しておくことにしました。
内外面被覆された揚水管の状態は良好だったので、こちらは再利用させてもらうことにしました。
今回で4回目の交換となりますが、前々回のポンプ故障時までは、生活用水を井戸水だけに頼っていたことから隣の家から水道をお借りして仮設配管をして水を使えるようにしました。
その時の教訓で、その後上水道も引き込んでいます。
前回と同じく今回も、上水道から仮にバイパスを組み、ポンプと井戸ケーシングの納品を待ちました。
ポンプ故障から丁度一ヶ月待ちました。
今回はポンプ廻りの配管も改善させていきます。
今回挿入するのはVP100の横スリット管とスリーヴ付直管です。
砂利充填の際に継手の段差にかからずにスムーズに落下していくように、スリーヴの向きは下側にさせました。
そのことで総重量が300kgにもなるパイプをパイプバンドだけで掴んでおくには少々不安があったので、井内へ滑り落とさないように保険でビスで滑り止めを施しました。
反対にビスがパイプ内に飛び出ていると今度は挿入する水中ポンプがビスに引っ掛かるので挿入時の抜き忘れには注意しました。
吊り上げてみると夏の気温でビニルパイプが反ってしまっているのがよく分かります。
ゴリゴリと鉄管ケーシングに擦りながら入っていくのが手に伝わってきます。
レッカーのオペレーターから此方は全く見えないので、無線を通じて細かい指示を出しながら慎重に作業を行いました。
無事に二重ケーシングパイプが設置できたので、続けて水中ポンプも挿入していきます。
井戸ケーシングが細くなったことで水中ポンプもギリギリです。
時折り、パイプの継ぎ目にポンプの僅かな出っ張りが引っ掛かるので、こちらもゆっくり慎重に降下させていきました。
ポンプも所定の深さまで無事に挿入できたところで砂利の充填を行いました。
汲み始めの地下水の濁りを極力減らしたかったので事前に時間を掛けて砂利の洗浄を行っています。
計画段階から終始心配していたのが、この砂利の充填作業です。
汲み上げ水量を減らしてしまう可能性があるので当初、砂利を入れないことも検討したのですが、砂利を詰めておかないと鉄管ストレーナーに穴が開いた時に、やはり濁りを生じてしまうような気がしました。
僅かな隙間しかないところへ、鉄管にサビコブでもあろうものなら上手く入っていくのか、しかも入れたパイプも反っていて天井は張らないだろうかと不安がよぎります。
念入りにパイプに振動を与えつつ、少しづつ充填作業を行っていきました。
水出し作業を行うと汲み始めは錆び濁りだらけでした。
おそらく鉄管ケーシングを擦っていったことで錆が落ちたのだと思われます。
この濁り水を汲んでいる状態で誤ってポンプを停止させてしまうと、ポンプの羽根がロックしてしまうことがあるので電源を落とさないことが重要です。
その後、一昼夜出しっ放しにして濁りも安定してきたようですので配管を切り替え復旧作業に入りました。
結果的に水量はやはり減らしてしまったので、吐出バルブで汲み切らないように調整させました。
今回の故障時に漏電ブレーカーが働かなかったので、こちらも新しく交換しました。
圧力タンク出口の元バルブも壊れてしまっていて、開閉が出来ない状態にあったと同時にゲートが完全に開き切れていない状態だったので交換させていただきました。
内部のゲートがボロボロで、少しレンチで力を掛けたくらいで割れてしまうほど老朽していました。
遅かれ早かれ水漏れを起こしていたに違いありません。
通水したところ、コンクリート製水栓柱の内部の継手から激しく水漏れしていました。
取り合えず水漏れを止めたかったので小技を使って修理しました。
その後、暫く使っていただいたところ濁りも収まったようですので、これにて更新完了です。
E(有) 代表様
K(有) 代表様
この度もご依頼下さり、誠に有難う御座いました。