今回の依頼は、井戸の埋戻しです。
建屋を解体して売却されることになったので、敷地内にある井戸を埋め戻してもらいたいと解体施工業者様からのご相談でした。
井戸にまつわる怖い話や迷信もあり、後々の災い事やトラブル発展の心配が拭えないことから専門家に任せたいとのご意向でした。
現場調査に入ると昔ながらの掘り井戸でした。
深さはそれなりに深く、地表面から10mあって水深は50cm程でした。
高台に位置する地盤の堅牢な土地柄ですので、大昔は生活用水に苦労した地域であったと予想されます。
現在は上水道が整備されていて、使用されていないご様子でした。
先人方は危険も省みずに、よくもこれだけの深い穴を人力で掘られたものだと感心いたします。
今回も吉日を選んで作業を開始させていただきました。
工事当日前までに井戸のお祓いはお施主様にて済ませてもらっています。
掘った方々のご苦労を想うと埋めてしまうのは大変忍びないですが、不要でいて大地震の際の崩壊リスクを考えると埋めてしまった方が安心できます。
これまで命を繋いでくれた井戸に感謝をし、工事完了までの安全を祈願しました。
先ずは井戸の水汲みから始めさせていただきました。
長く停滞していた井戸水を清らかな湧水に入れ替える意味合いと、井戸底に沈んでいる不用物などが有れば拾い上げたい為です。
揚程が10mともなると投げ込み水中ポンプでは直接地上まで送水できないので、途中で中継させることにしました。
10分もしない内に完全に汲み切ってしまいました。
井戸を掘った当初よりも地下水位が下がって水量が足らなくなってしまい使用を辞めてしまったか、上水道の方が便利だったため不要になったというところでしょうか。
酸欠と井戸肌の崩落に細心の注意を払いながら井戸底へと降りて行きました。
しっかりと管理されていたようで、全くと言っていいほどゴミは落ちておらず清浄な状態でした。
井戸を埋め戻すにあたり生き物がいない事を確認する事が最も大切だと考えます。
有っては困りますが、事件性などで人の死体が無いとも言い切れませんし…。
猫や犬などの小動物が過って落ちてしまい死骸として残って無いことも確認できましたので地上に戻ります。
慣例に習って、節抜きを行った息抜き用の竹を設置させていただきました。
竹を入れる目的は諸説あるようですが、科学的根拠は私自身も詳しく存じておりません。
信憑性が高そうなところで考えますと、地下のガスを抜くためとか地下水圧力を正常に保つとか、竹を小さな井戸に見立てて、ゆっくり時間を掛けて入れた竹が朽ちて無くなってしまう事で本来あった掘削前の自然な状態に戻す事を目的としているとか…。
昔はビニルパイプが無い時代だったので竹だったのでしょうが、ビニルパイプですと自然に還らずにず何時までも人工的なゴミとして残ってしまいますので、当店では竹を採用するようにしています。
以前、井戸がありましたよと言うお印でもありますので、井戸の真上に建物などを建つ場合は充分に対策を講じて頂きたいと思います。
一層目に玉砂利を入れ、二層目にビリ砂利を入れ、三層目に川砂で埋め戻していきました。
地下水の流れを阻害させず汚染もさせずに、更には沈下もさせない事が重要ではないかと考えます。
最後に、地上に降った雨水に混じって有害なものが直接流れ込んでいかないようにサバ土で締めました。
掘った当時の土を埋め戻して、元来あった状態に戻すことが最良の方法だとは思いますが、残土は既に処分されておりますし、それですとどうしても長年にわたり沈下、陥没の懸念が継続してしまうように感じます。
これにて井戸仕舞いとなります。
(株) F H様
(株) W T様
A様
この度はご依頼下さり、誠に有難うございました。