井戸を掘ってもらいたい

今回の依頼は、打ち込み井戸の施工です。

上水道が整備されていない地区で、水道を引き込もうとすると何キロも先から本管布設工事を個人負担でしなくてはならず何十億円もかかってしまい現実的では無いので、現在は山からの垂れ水をタンクに溜めてポンプで送水して生活用水として使用しているようです。

大雨が降る度に沢が濁ってしまうので、安定した生活を送るためにも井戸を掘ってもらいたいとのご相談でした。

山間谷川のある地形は岩盤地である場合が多く、打ち込み井戸の工法は不向きなのですが、直ぐ真横にある御子息様夫婦の家は新築時に打ち込み井戸を施工し、現在も使用されているとのことでした。

でしたら、ご子息様宅から水を分けてもらうことは出来ないのですかとお尋ねしたところ、水の出が少ないみたいなので分けてもらって迷惑をかけるような事は避けたいとのお話しでした。

当時、施工してもらった業者さんは高齢により既に他界されており、知り合いの水道工事店に紹介されてこの度ご縁をいただきました。

ご子息宅の打ち込み井戸は7m程打ってあるとのことで、岩盤に到達してそれ以上は打てなかったと、当時を振り返って説明してくださいました。

その井戸から3m近く離れた場所へ打って欲しいとのことでしたが、既存の井戸に近すぎると少ない地下水を取り合うことにならないか心配しました。

ただ、あらゆる条件を考慮したときに、その位置が最適と考えられましたので、その位置へ施工させていただくことにしました。

 

 

自然豊かな場所で空気が澄んでいてマイナスイオンもタップリでとても良いところですが、施工する側としては、大きな岩がゴロゴロしていて見るからに堅そうで、本当に打ち込みできるのか不安しかありません。

橋の反対側になるこちらは、一枚岩のように一面岩肌でした。

 

7mを目安に最初の5.5mを打ち込みました。

一本目は拍子抜けする程すんなりと打ち込めました。

水深を測ると管底に50㎝程度溜まっているだけでした。

既存の井戸は、たまたま大きな岩に当たって打ち込めなくなっただけで、ひょっとしたら7mを超えて打てるのかもしれないと、1mの含みを持たせた2.5mを溶接接合して打ち始めました。

ところが思惑とは反対に、6m手前で完全に止まってしまいました。

10分ほど粘って打撃を続けたのですが変化が無く、辺りの地形からしても概ね岩盤到達で間違いないだろうと判断しました。

既存の井戸が間違いなく7m打ち込まれていたとして、3mも離れていない位置で1mの高低差があるということですから、山間部の打ち込み井戸の位置決めは明暗が分かれるくらい本当に難しいと感じます。

どうにもこうにも、深くすることも浅くすることも出来なくなってしまいましたので、確認のため地下水の水深を測ると1mちょっとしかなく、いつものエアーリフト洗浄では地下水を地上に汲み上げることができませんでした。

既存の井戸よりも1mも浅いため、汲み上げることが出来ないのではと位置を変えて打ち直しを考え始めていた中、エンジンポンプ揚水によりその不安は一瞬で払拭されることとなりました。

 

 

水深が1.2mしかないのに、こんなにも豊富な水脈があるのには正直とても驚きでした。

動画の最後にもある、あの川底の岩に当たったのでは、打ち込み工法では限界でしょう…。

打ち込めなくても不思議ではない場所で奇跡的に打ち込めて、地下水が無さそうな深さで毎分200リットル以上の汲み上げができることなど、博打的要素が非常に高いのが打ち込み井戸工事です。

「出るかもしれませんし、出ないかもしれません。やってみないことには分りません。地下水が出なかったとしても作業費は掛かります。』

請け負う前に、このように説明させてもらってます。

リスクを負ってGOサインを出してくれたからには全身全霊をもって作業にあたらせていただいておりますが、その先に待っているのは果たしてどちらであるのか、やってみないことには分かりません。

地形から判断して明らかに打てそうにない、または過去実績データから打てても水質が悪かったり水量が細かったりなどご希望に添えない場合はお断りさせてもらうか、辞めておいた方が宜しいのではないですかと助言させていただいております。

井戸施工業者が言う「出るかもしれないし、出ないかもしれない」は、「多分出るとは思いますが、絶対では無いのでお約束はできません」の意味ですから、良くも悪くも結果を知るには先ずは決断してもらい前へ進んでもらうしかないのですね。

 

 

 

 

 

口径:50A 完成深度:G.L.-5.75m 静水位:G.L.-4.55m
水量:多(推定210ℓ/min) 鉄分:反応無し 砂量:僅か(細砂)
砂色:焦げ茶 水色:薄茶色 水温:17.0℃ 外気温:23.0℃ 天候:晴れ
六曜:先勝

 

 

 

 

黄色い箱の中に隣の井戸とポンプが設置されています。

この距離で岩盤までの深さの違いが1mもあります。

たまたま大きな岩に当たったのか、岩盤が斜面になっているのかは確認のしようもございません…。

最初のお話しで水の出が少ないと仰っていた理由は、ポンプの能力が130Wと低スペックだからかもしれませんね。

 

 

既存のポンプを新しく打ち込んだ井戸の直ぐ横へ移動させて、配管接続、コンセント増設工事をしました。

 

 

綺麗な地下水がたくさん出てくれて嬉しいと、お客様にとても喜んでいただけました。

ところが、数日後に水が落ちてしまったと連絡がありました。

ポンプを移設した日も、音聴機を当てると時折りコポン、コポンとエアーが吸い込んでいるような音がして、いまいち面白くない気がしてたので、ダメ元でコーキングをこれでもかと塗りたくって様子をみてもらったのですが、誤魔化しは所詮誤魔化に過ぎませんでした。

溶接部分での接合不良で目視で確認できないような僅かな穴が開いていると思われます。

地表面から50cm程度のところで継いであるため、再度打ち込み機械を持ってきてセットするのは大掛かりで大変なので人力で掘削しました。

 

 

溶接部分の下で切断して、溶接し直して吸管も組み戻しました。

当店がネジで接合しない理由は、今回のようにとても堅い地層を長時間打撃しているとネジ部で亀裂して折れてしまうことがあるためです。

その部分で今回のようにエアーを吸い込むことになりますし、抜き上げしたい時に下の管だけ地中に置いてきてしまう事になってしまうからです。

そうなると地下の鋼管の回収もできないですし、同じ穴は使えませんから場所を変えて最初から打ち直しとなってしまいます。

と言う失態を井戸屋でありながら過去に経験済みであります。

 

 

 

エアー吸いの音は無くなりましたが、山からの垂水のせいなのか、サラサラ、チャプチャプと水が流れる音が聞こえます。

 

 

 

1年前に交換したばかりのポンプもあまり調子が良くないとのことでしたので、圧力スイッチの調整をしたところ復調したようで、お風呂の水も早く溜まるようになったと喜んでいただけました。

今度は大丈夫だと信じていますが、また暫く様子をみていだだくこととします。

最後まで責任を持って対応にあたらせていただきますので安心していただければと存じます。

 

(株) S 担当様
この度はご紹介ありがとうございました。
S様
この度はご依頼ありがとうございました。

 

 

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